原文はこちら:【What You Should Know About Diving After Covid-19】
以下の内容は、DANヨーロッパからの情報で、DANヨーロッパの了解を得て翻訳したものです。
また、この情報は現時点におけるものであり、今後の新しい情報に注意願いますとともに、ダイバーに有益と思われる海外DAN等の情報に接した方は、DAN JAPANまで連絡願います。ダイバーの安全等に係る情報については、極力、翻訳・発信させていただきます。
なお、海外DANの発信する情報には著作権があり、無断で利用することはできませんので、ご注意ください。
ダイビングに復帰するに当たっての医学的推奨事項
ほとんどの場合、上記の医学諮問は、このウイルスの様々な症状や感染リスク、それに、この疾病の重症度を決定すると思われる既知のリスクファクターを論じています。執筆した人たちは、注意深くも、この諮問を作成した時点では科学的データが乏しいことを指摘していますが、臨床論文では、Covid-19に感染すると肺や心臓、中枢神経系、腎臓の機能が非常に悪化するという症例が報告されています。
ダイバーには特に懸念される点があり、それは、肺と心臓に後々まで影響が残ると指摘されている点です。他の重篤なウイルス性肺炎と同様、Covid-19に感染したことのあるダイバーにとっては、完全な形で活動を再開するまでに元の健康体に戻る回復期間が必要で、これは症状の重症度によって違いますが、数週間から数ヶ月かかる可能性があります。
以下はCovid-19罹患後にダイビングに復帰するための統一推奨事項です。
COVID-19の検査で陽性であったが無症状であったダイバーと、症状はあったが入院には至らなかったダイバーへの指示は、最初の推奨事項が2020年の初春に作成されてから、アップデートされていることに注意してください。現状、以下の通りです。また、指示と推奨事項はヨーロッパ諸国の間で少し違っているかもしれないことにも留意してください。各国の推奨事項は、これまでほとんどよくわからなかった心肺疾患に対処するために作成されたもので、国や文化を超えて完全に統一できるものとは思われません。しかし、どれもが、ダイバーたちに注意するように強く促しています。
推奨事項:
・COVID-19の検査で陽性になったが完全に無症状であったダイバーは、検査で陰性になってから少なくとも30日待機し、ダイビング適性クリアランス(承認)を受け、その後ダイビングに戻るべきです。
・COVID-19の症状があったダイバーは、検査で陰性になってから30日間待機し、それに加えて、さらに30日間(合計2ヶ月)無症状を続けてから潜水医学専門医によるダイビング適性クリアランスを受けるようにすべきです。
・COVID-19で入院した、あるいは、それに関係した肺の症状で入院したダイバーは、潜水医学専門医が行う、あるいは、調整するダイビング適性クリアランスを受けるのに少なくとも3ヶ月待機すべきです。このクリアランスには完全な肺機能検査(少なくともFVC, FEV1, PEF25-50-75, RVおよびFEV1/FVC)と 末梢の酸素飽和度測定下での運動負荷試験、それに、高解像度CTスキャンで肺が正常に戻っているかの検査が含まれます。
・COVID-19で入院した、あるいは、COVID-19関連の心臓のトラブルで入院したダイバーは、潜水医学専門医が行う、あるいは、調整するダイビング適性クリアランスを受けるのに少なくとも3ヶ月待機すべきです。このクリアランスには、心エコーおよび運動負荷試験(運動時心エコー)を含む心臓の検査で正常の心機能であることを確認するべきです。
こうした肺と心臓の検査は、潜水医学の専門知識を持った医師に判断・確認してもらうべきです。DANヨーロッパのメンバーは、メンバーシップの特典の一部としてDANヨーロッパダイビングサポートネットワークからダイビング医学専門医によるリモート医学相談を受けることができます。
また、スイス水中・高圧医学会(SUHMS)が作成した、わかりやすいこれらの推奨事項のこれらの推奨事項のフローチャート・ダウンロード版もあります。これは、2021年1月29日に改訂されたものです。このSUHMSの推奨は、少し厳しいことに留意してください。
知っておくべき他のリスク因子
COVID-19感染症に罹患したダイバーにはさらに潜在的な他のリスクがあるかもしれません。肺の圧外傷や肺の気泡短絡(シャント)、心臓やその他のトラブルの高いリスクがあるかどうか判断する最もよい方法は、推奨される潜水医学的検査を受けることです。リスクが高いおそれのあるダイバーは、ダイビング活動を再開するにあたって、担当の潜水専門医に診てもらって次のことを考慮するとよいでしょう。
肺過膨張症候群(肺圧外傷):
重篤な肺の症状が出たダイバーは肺の損傷が長期にわたるかもしれませんし、生涯治らないかもしれないことに留意してください。たとえ、肺機能が(ほぼ)以前と同じに見えた場合でもそうしたおそれがあります。この損傷のために肺圧外傷のリスクが高くなるかもしれません。たとえ、ダイビングで急浮上や制御できない浮上がなかった場合でもそのリスクが高くなるかもしれません。(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine:ベルギー潜水・高圧医学会)
肺の酸素中毒:
現時点では、肺組織の酸素毒性に対する感受性が高くなる可能性についてほとんどわかっていません;ですから、たとえば、リブリーザーダイビングでPO2が1.3ATA以上の高分圧酸素ガスを長時間呼吸するといったテクニカルダイビングは避けるべきだというのが、賢明な態度といえるでしょう。ダイビングの最も深い水深で、最大PO2が1.4ATAのものを短時間呼吸するだけの単純な“ナイトロックスダイビング”では、問題は生じません。(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine)
減圧障害:
COVID-19の肺感染後に、肺の“気泡フィルター”機能が変化する可能性については、まだほとんどわかっていません。変化があるとすると、減圧症のリスクがかなり高くなるかもしれないということになります。ですから、COVID-19の肺の症状が出たダイバーは、一時的に(あるいは、完全に)コンピュータの無減圧限界(NDL)に十分余裕を持たせる範囲でダイビングをするのが賢明な態度だといえるでしょう(ダイビング中のいかなる時にもコンピュータが必須の減圧を表示しないように)(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine)
感染拡大を防ぐ:Covid-19 とダイビング
Covid-19を市中から追い出すことはできないでしょうから、人と人との距離が近いとか、個人用の器材を使い回すようにすると、どうしても感染するリスクが生じると考えられます。ダイブセンターやダイブチームは、それぞれが、公表された推奨を使って、リスクを予防し縮小するように検討するべきでしょう。ダイバーとダイブセンターは、ダイビング連盟とDANヨーロッパ並びにDivers Alert Networkが公表しているように、ダイビング器材の消毒のガイドラインをしっかりと守るようにすべきでしょう。
一般的に、以下のことが推奨されます:
ソーシャルディスタンスを引き続き確保すること。ダイビング中(ほとんどがダイビング中に陸上にいる時)も、マスクをつけることや常に安全なソーシャルディスタンスをとるなどの、地元当局の求めるソーシャルディスタンスを引き続き確保します。
個人用とレンタル用の器材を消毒すること。これには緊急酸素器材を含み、カビやバクテリア、胞子、ウイルスなどの広範囲な病原菌をカバーする適切な消毒剤を使います。
個人用の呼吸装置を交換しないようにします。ただし、実際の緊急事態は別です。“呼吸システムのシェア”の練習を計画する場合は、どんな場合も、そのような方法で個人の保護が確実になるようにしてください。
上記の推奨事項を守ることで、ダイバーは感染拡大のリスクを抑えることができますし、また、Covid-19になったダイバーが考えられる最も安全な方法でダイビングを再開することができます。
ブログ, 医療関連・安全情報 Read More DAN JAPAN